諸喜田 政勝(しょきた まさかつ)さん

嘉陽の人      PEOPLE OF THE KAYOU

諸喜田 政勝さん
(しょきた まさかつ)

66歳
パドルスポーツガイドショップ
「テラワークス 」を主宰。
https://terraworks.jp

Q:出身地を教えてください。

A:生まれは福岡県で、4歳から父の故郷である沖縄に移り住んだから、ほぼ沖縄育ちだね。 高校を卒業した後、いろいろな仕事をしながら東京で暮らしていたんだけど、31歳の時に沖縄に戻って来たんだ。 

 

Q:どうして嘉陽と関わるようになったのですか?

A:今から約28年前、初めてシーカヤックで沖縄本島を一周した時に嘉陽に立ち寄ったのが最初かな。海から嘉陽の海岸に上陸して、売店で買い物をしたんだよね。ここの雰囲気とロケーションに惚れ込んで、それからよくツアー(お客さんを連れて)で通うようになったんだ。

 

Q: 今のお仕事について聞かせてください。

A:1991年に「テラワークス」というアウトドアのお店とガイドをする会社を立ち上げて現在に至ります。シーカヤックやSUP(スタンドアップパドルボート)などパドルスポーツと、シュノーケリングやネイチャートレッキングなどアウトドアでの遊びをリンクしたツアーを企画してガイドをしています。「テラ」はラテン語で地球という意味で、地球に携わる会社って意味を込めてね。

 

Q:テラワークスをはじめた理由は?

A:自分の趣味というだけでなく、他の人にもこのスポーツを教えたいという思いがあったね。テラワークスをはじめた当初は、沖縄本島の南部にある浦添という街を拠点にしていて、観光客相手ではなく地元の人たちをメインにアプローチしていたの。その頃はまだシーカヤック自体が浸透していなかったから、それだけでは成り立たなくてね。シーカヤックというスポーツを定着させるには、まずは地元の人たちにシーカヤックの認識度を高めないといけないと思ってね。沖縄FMでラジオのパーソナリティを務めたりして、シー カヤックの宣伝をしてたんだよね。シーカヤックの魅力は、一般的には陸から海を見るのが普通なんだけど、シーカヤックは漕ぎながら海から陸を見ることが出来るところだと思う。また、シーカヤックからの目線は海抜0の世界なんだ。実際これだけ綺麗な海が広がる沖縄に住んでいる人も、海から沖縄の陸地を見ることは中々無いから、初めてシーカヤックに乗った人にとってはとても新鮮な体験になるんだよね。シーカヤックをコンテンツにして沖縄の良さを伝えたいという気持ちが強くあって、テラワークス を主催することにしたんだよ。

 

シーカヤックの写真

Q: 様々なコンテンツがある中で、なぜシーカヤックをお仕事にしようと思ったのですか?

A:シーカヤックは本来、荷物を積んで島から島へ、ビーチからビーチへキャンプをしながら進んで行くパドルスポーツなんだよね。つまり、旅の要素が強いんだよね。今はマングローブツアーなど商業的なツアーが多いけど、僕がやっているのは同じシーカヤックでもフィールドの次元が違うんだ。

 

 

 

Q:お仕事のやりがいはありますか?

A:自分が人生の中で追い求めていたものなのでやりがいはあるよ。実は、ツアー以外にシーカヤックのスクールもやっているんだよね。本来はツアーよりも教える方が大切だと思っている。僕が今までに教えた人は、北は北海道から南は西表島までいて、その中の20名ほどは僕と同じガイドの仕事をしているんだよ。協会が発行するガイド資格というのもあるんだけど、僕はそういうものはあまり好きじゃないので、全て自己流です(笑)。結局、経験値なくしてスキルは得られないからね。

 

Q: 危険も伴うお仕事だと思いますが、大変なことも多いのではないですか?

A:ツアーには当然、初心者のお客さんもたくさん来るから、いかにお客さんを導くかがガイドの腕だと思っています。安全で楽しく、時には厳しく。自然は厳しいからね(笑)。天気が悪い日や、一日中向かい風の中を漕がないといけない日もある。どんなシチュエーションでも動じないためには、まずは自分のスキルを磨く事が大事。毎日安全なところばかりで漕いでいてはスキルは向上しない。ある程度はデンジャラスなこともしなければ勉強にはならないんだよ。この仕事をするからには、まず自分が率先して色々な状況を勉強しなければいけないから、ガイドの仕事っていうのは厳しいね。

 

Q:シーカヤック自体に興味を持ったきっかけはなんですか?

A:もともと若い頃から旅が好きだったの。60年代後半から70年代に流行った「ヒッピー」っていうアメリカの文化にも影響を受けて、よくリュックひとつで旅をしていたよ。こういうバックパッカー は陸の旅なのに対して、シーカヤックは海の旅。僕が20代の頃そんな旅をしていたのが、今の仕事の延長線上なんだよね。

 

 

Q:諸喜田さんにとってシーカヤックの魅力はなんですか?

A:今の時代って、なんでもスピードが速いじゃない。海から沖縄を見るときに速いスピードだったら、車で走っているのと同じで景色が通り過ぎるだけなんだけど、シーカヤックっていうのは時速5~6kmくらいの世界で、自然をいちばんゆっくり観察できる。シーカヤックのそのスピード感が好きだね。あとは達成感かな。自分の腕だけで目的地まで漕ぎ渡るっていう。登山家もそうじゃないですか。登山家に「なんで山を登るんですか?」って聞けば「そこに山の頂があるから」って言うのと同じように、僕の場合は海があるからだね。登山家が自分の足だけを使って一歩一歩頂上に向かっていくのと同じように、シーカヤックは一漕ぎ一漕ぎ進んでいく。動力に頼らないからもちろんきついんだけど、波のうねりや風を自分の五感でフルに感じられるのもシーカヤックの魅力かな。

 

Q: 嘉陽の他にも拠点があると伺いましたが。

A:自宅は瀬底島という沖縄の西側の島にあります。嘉陽は太平洋側、瀬底島は東シナ海側で海が真逆なので、その日の天気や風、シーズンによっても海の表情が全く違うんです。 たとえば、冬は瀬底島の方は北風が強くて海が荒れるからガイドしづらいけど、逆にそんな時は嘉陽のコンディションがすごくいい。一年を通してお客さんを案内するために、大きくふたつの場所に拠点を持っているというわけです。

 

Q:お休みの日は何をしているんですか?

A:休みの日も一人で海に出ることが多いね。家でじっとしていることはほぼないな。「今日は ○km漕ぐ」とかその日1日の目標を立てて、夜が明けない時間から日が沈むまで、上陸せずに何時間でも乗っていることも多いね。あとは、レコードを聴くのが好きだから、嘉陽の家にはレコードプレーヤーが置いてあって、家ではジャズを聴いて過ごすのが最高だよ。

 

Q:これからの展望というか、今後やりたいことはありますか?

A:野望はまだあるんですよ(笑)。まだ本州までシーカヤックを漕いで行ったことがないから、鹿児島まで漕いで行きたいというのがずっと頭の中にあって。約800kmあるんだけどね(笑)。70歳まであと3年あるから、体力があるうちにやっておきたいと思っている。

 

 

嘉陽の海岸線Q: 嘉陽のいちばんの魅力はなんだと思いますか?

A:やっぱり嘉陽の海岸線だね。今は沖縄もほとんどの場所はリゾート地化されているけど、嘉陽の海岸線にはワイルドな自然が残っていて、沖縄の原風景がある。嘉陽みたいな海岸線はもうなかなかないと思うよ。

 

Q:これからの嘉陽にどうなっていって欲しいですか?

A;いま嘉陽は若い人が少しずつだけど増えてきているから、これからもっともっと変わっていくんじゃないか な。でもね、若い人たちが増えていくのは良いことなんだけど、若い人だけにスポットを当てるんじゃなくて、もっと年配の人たちをリスペクトしなくちゃいけないんだよね。やっぱり長く生 きてきた人たちはそれだけ人生経験も豊富なわけだから。そういう人たちをもっと労って敬うことが必要だと思うよ。

 

Q: 嘉陽、そして沖縄に来ようと思っている人に対してメッセージをお願いします。

A:まず沖縄に来たら、SUPでもシーカヤックどちらでもいいから体験して欲しいですね。海から陸を見て欲しい。もちろん、テラワークスでね(笑)。連絡をくれれば沖縄の綺麗な海と自然を案内します!